「登山を始めたい」と思ったとき、多くの人が最初に気になるのは、やはり金額だろう。
登山という趣味には、どこか“装備産業”のようなイメージがある。
高機能素材、軽量化、ブランド、UL、ハイエンドギア――。
SNSやYouTubeを見れば、数十万円単位の装備が並び、「始めるだけで大金が必要なのでは?」と思ってしまうかもしれない。
一方で、「高尾山なら普段着で行ける」「全くお金はかからない」という意見もある。
では、実際はどうなのか。
結論から言えば、答えはその中間にある。
装備の金額は“登る山”によって変わる
まず前提として、登山と一言で言っても幅が広い。
例えば、高尾山の一号路であれば、極端な話、散歩に近い。
舗装路中心であり、観光地としての側面も強い。
このレベルであれば、確かに特別な装備は不要だろう。
しかし、同じ高尾山でも稲荷山ルートに入ると話は変わる。
土の登山道となり、滑りやすい箇所も増える。
「行ける」と「快適に安全に歩ける」は別問題であり、この辺りから登山靴の必要性が見えてくる。
さらに、塔ノ岳の大倉尾根クラスになると、長時間歩行・急登・下山時の足への負担が加わる。
20代で体力がある人なら、スニーカーで登っているケースも確かにある。
だが、それが“推奨される装備”かと言えば、そうではない。
年齢、脚力、体重、経験値。
装備の適正は、こうした条件によっても変わってくる。
では、最初に何を買うべきなのか?
ここからは、私の持論になる。
いわゆる登山の“三種の神器”と言われるものがある。
- 登山靴
- ザック
- レインウェア
だが、初心者が最初に優先すべきものは明確だ。
それは、登山靴である。
登山靴だけは、最初から意味がある
ザックは、最初は手持ちのリュックで問題ない場合が多い。
レインウェアも、日帰り低山だけなら絶対必須とは言い切れない。
もちろん本来は安全装備だが、「まず始めてみる」という段階では後回しにできるケースもある。
ウェアに関しても同様だ。
最初から全身を山ブランドで固める必要はない。
スポーティーな街着、速乾性のある服、それだけでも十分スタートラインには立てる。
しかし、登山靴だけは違う。
登山靴は、単なるファッションアイテムではない。
- 滑りにくさ
- 足首の安定
- 下山時の衝撃吸収
- 岩や木の根への耐性
これらが、疲労と安全性に直結する。
特に下山。
初心者ほど、下りで膝や足裏を破壊される。
登りは気力で誤魔化せても、下山は装備差が露骨に出る。
現実的な“登山スタート費用”
では、実際にいくら必要なのか。
現実的なラインで言えば、最初に必要なのは登山靴代が中心になる。
価格帯としては、
- 15,000円~25,000円前後
この辺りが、最初の現実的なレンジだろう。
このクラスの登山靴があれば、丹沢や奥多摩の一般登山道の多くには十分対応できる。
例えば、
- 大山
- 弘法山
- 景信山
- 御岳山
この辺りであれば、十分現実的な装備と言える。
登山は、最初から完成装備を目指さなくていい
登山を始めたばかりの頃は、どうしても「全部そろえなければいけない」と思いがちだ。
しかし実際には、山に慣れながら少しずつ装備を更新していく人が多い。
縦走を始めた。
雨の山を経験した。
夏山と冬で必要な性能が違うと分かった。
そうやって、自分に必要な装備が見えてくる。
だからこそ、最初からフル装備を買う必要はない。
まずは登山靴。
そこから始めれば良い。
思ったより、現実的な趣味である
「登山は金がかかる」
確かに、突き詰めれば青天井だ。
軽量化を追求し始めれば、装備はどこまでも高額になる。
だが、それは“趣味を深掘りした先”の話である。
入口だけを見れば、実はそこまで極端な世界ではない。
最初の一歩に必要なのは、ハイエンドギアではなく、「ちゃんと歩ける靴」なのだ。
そう考えると、登山という趣味は、意外と現実的な価格で始められる趣味なのかもしれない。






