鍋割山は甘くなかった ― 鎖場を見に行ったつもりが、急登に鍛えられた丹沢21km縦走
鍋割山付近に、それなりの鎖場があるらしい。
そんな話を聞いたのが今回の山行のきっかけだった。
丹沢には数え切れないほど通っているが、鍋割山周辺の鎖場はまだ歩いたことがない。
高度感はどの程度なのか。
難易度はどれくらいなのか。
実際に自分の目で見てみたかった。
どうせ行くならトレーニングも兼ねよう。
そう考え、田代向からスタートし、タケ山、伊勢沢ノ頭、檜岳、雨山を経由して鍋割山へ向かうロングルートを選択した。
結果として、鎖場以上に急登に苦しめられる山行となった。
山行データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日程 | 2026年6月13日 |
| エリア | 丹沢 |
| 天候 | 晴れ |
| 距離 | 21.0km |
| 累積標高差 | 登り1,831m / 下り1,778m |
| 行動時間 | 9時間58分 |
コースタイム
| 時刻 | ポイント |
|---|---|
| 08:17 | 田代向バス停 |
| 08:41 | タケ山登山口 |
| 09:45 | タケ山 |
| 10:33 | ダルマ沢ノ頭 |
| 10:50 | 細尾山 |
| 11:26 | 林道秦野峠 |
| 12:57 | 伊勢沢ノ頭 |
| 13:21 | 檜岳 |
| 14:00 | 雨山 |
| 14:39 | オツボ沢ノ頭 |
| 15:22 | 茅ノ木棚沢ノ頭 |
| 15:44 | 鍋割峠 |
| 15:50 | 鍋割山荘 |
| 15:58 | 鍋割山 |
| 17:16 | 二俣 |
| 18:16 | 大倉バス停 |
田代向からスタート
朝8時過ぎ。
田代向バス停から歩き始める。

しばらく舗装路が続く。
この時間はまだ余裕がある。
今日の本番はもっと先だからだ。

タケ山登山口から山道へ入ると、さっそく丹沢らしい歓迎を受ける。
ヒルである。
登り始めてすぐに数匹が寄ってきたが、忌避剤のおかげで大事には至らなかった。

初夏の丹沢では、もはや風物詩と言ってもいい。
予想以上に厳しい前半戦
今回の目的は鎖場だった。
だから正直なところ、鎖場が出てくるまでは前座くらいに考えていた。
しかし、それが甘かった。
タケ山を越えた辺りから急登とアップダウンが続く。
ダルマ沢ノ頭へ登る。

下る。
また登る。
そして伊勢沢ノ頭へ向けてさらに登る。
特別な危険箇所はない。
だが、地味にきつい。
丹沢らしい嫌らしさが詰まっている。
標高そのものは高くないのに、気が付くと脚が削られている。
特に伊勢沢ノ頭までの登りは長く感じた。

鎖場のための体力温存どころか、鎖場に着く前にしっかりトレーニングが完了してしまいそうだった。
鎖場への期待
檜岳を越え、雨山方面へ進む。
細尾根が現れ始める。
鎖も見えてくる。
しかし最初のうちは拍子抜けだった。
鎖は付いている。
だが使う必要がない。
足場もしっかりしている。
「鍋割山の鎖場って、この程度なのか」
少し期待外れだった。

もちろん危険箇所がないのは良いことだ。
だが今回は鎖場を見に来ている。
もう少し刺激が欲しい。
そう思いながら歩いていた。
最後の最後で現れる核心部
そして、その時は突然やってきた。
茅ノ木棚沢ノ頭を過ぎた辺り。
それまでとは明らかに雰囲気が違う。
まず現れたのは崖沿いのトラバース。
斜めに張られた鎖を使いながら横移動する。
見た目のインパクトはなかなかある。

このタイプはあまり経験がない。
ただ、実際には足場がしっかりしているため、冷静に通過すれば問題ない。
そしてその先。
今度は長めの垂直鎖場が現れる。

ようやく見たかった鎖場に出会えた。
正直なところ、技術的難易度はそれほど高くない。
しかし疲労した状態で通過すると話は別だ。
今回のように20km近く歩いた終盤で出てくると、それなりの存在感がある。
少なくとも、「鎖場の雰囲気に慣れる」という目的は十分達成できた。
鍋割山が遠い
鎖場を越えて終わりではない。
鍋割峠まで下る。
そして鍋割山へ登り返す。
木々の隙間から山頂が見える。
しかし、その山頂が遠い。

見えているのになかなか着かない。
登山経験者なら誰でも一度は味わったことがあるだろう。
終盤の登り返しは身体よりも精神に効く。
累積標高差1,800m超の山行ではなおさらだ。
この日一番つらかったのは、もしかすると鎖場ではなく、この登り返しだったかもしれない。
鍋割山荘、そして下山
15時50分。
鍋割山荘へ到着。
当然ながら鍋焼きうどんは営業終了。

それでも多くの登山者が残っていた。
人気の高さを感じる。
山頂付近では雷鳴も聞こえていたため、休憩もそこそこに下山を開始する。

後沢乗越を経て二俣へ。
そして大倉へ向かう。
この区間は何度歩いても長い。

山頂に着いた瞬間に終わった気になるが、本当に終わるのはバス停に到着してからである。
数十年ぶりの虹
大倉が近づいた頃、空に虹が現れた。
最後に虹を見たのがいつだったか思い出せない。
疲労した身体で見る虹は妙に印象に残る。
派手な絶景ではない。

しかし、この日の締めくくりとしては十分だった。
まとめ
今回の目的は、鍋割山付近にある鎖場を実際に見てみることだった。
結果として、その目的は達成できた。
鎖場自体の難易度はそれほど高くない。
だが、疲労した状態で現れるため、トレーニングとしては十分価値がある。
そして実際に歩いてみて感じたのは、このルートの本当の敵は鎖場ではないということだ。
何度も繰り返される急登と登り返し。
距離21km、累積標高差1,831m。
数字以上に体力を削られる。
鎖場を見に行ったつもりが、気付けば急登トレーニングをみっちりこなしていた。
そんな丹沢らしい一日だった。





