岩場は、歩かなければ上達しない
西黒尾根への挑戦を決めてから、意識していることがある。
それは、岩場や鎖場の技術は、実際に歩かなければ身に付かないということだ。
丹沢には鎖場を持つルートがいくつか存在するが、その中でも鍋割山から芽ノ木棚沢ノ頭にかけての区間は、人が少なく落ち着いて行動できる。難易度は極端に高くない一方で、長い鎖場や急な登り返しがあり、技術を確認するには適した環境と言える。
今回は約9.7kgの装備を背負い、鍋割山から芽ノ木棚沢ノ頭まで往復した。
目的は観光ではない。
鎖場を下り、そして登り返す。
ただそれだけのために歩いた一日である。
山行概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 山行日 | 2026年7月12日 |
| 天候 | 曇り |
| 山域 | 丹沢 |
| コース | 大倉 ~ 鍋割山 ~ 鍋割峠 ~ 芽ノ木棚沢ノ頭(ピストン) |
| 距離 | 18.2km |
| 累積標高 | 1,279m |
| 行動時間 | 8時間14分(歩行6時間22分) |
| ザック重量 | 約9.7kg |
| 時刻 | 行程 |
| 07:05 | 大倉バス停 出発 |
| 07:55 | 黒竜の滝 |
| 08:14 | 尾関廣氏銅像 |
| 08:18 | 二俣 |
| 08:41 | 本沢渡渉点 |
| 09:21 | ミズヒ沢渡渉点 |
| 09:51 | 後沢乗越 |
| 10:26 | 鍋割山 |
| 11:18 | 鍋割峠 |
| 11:46 | 芽ノ木棚沢ノ頭 |
| 12:30 | 鍋割峠 |
| 12:49 | 鍋割山 |
| 13:58 | 後沢乗越 |
| 14:15 | 二俣 |
| 15:19 | 大倉バス停 到着 |
大倉から鍋割山へ
午前7時過ぎ、大倉バス停を出発。

今回は歩荷トレーニングも兼ねているため、ザックには約6Lの水を入れている。飲料というより荷重を目的とした重量で、総重量は約9.7kgになった。
ヘルメットはザックへ外付け。

登山口では少し大げさにも見えるが、岩場では迷わず装着する予定だ。
林道を歩き、二俣へ。
沢沿いの道は風が抜けるものの、湿度は高く、思った以上に暑い。沢を見るたびに飛び込みたくなるような気温だった。
途中のミズヒ沢では給水せず通過した。十分な水を背負ってきたためである。
鍋割山から先が今回の本番
鍋割山へ到着すると、山頂は若い登山者で賑わっていた。

パンを楽しむ人、休憩する人、それぞれが山頂での時間を過ごしている。
一方、自分はヘルメットを装着し、鍋割峠方面へ向かう。

ここから先が、今回の目的地である。
ガスが流れ込み、樹林帯は一気に静かな雰囲気へ変わる。

丹沢らしい、少し幻想的な景色だった。
鍋割峠への急下降
鍋割峠までは想像以上によく下る。

歩きながら思う。
「帰りは、この斜面を全部登り返すのか。」
体力よりも、そちらの方が気になった。
さらに驚いたのはヒルである。

標高1,100mを超えているにもかかわらず活動していた。
丹沢では珍しくなくなってきたとはいえ、この標高で遭遇するとは予想していなかった。
丹沢でも貴重な長い鎖場
芽ノ木棚沢ノ頭手前には、長い鎖場が現れる。
前日の雨の影響もあり、鎖は濡れていた。

無理に体を鎖へ預けず、足場を探しながら三点支持でゆっくり下降する。
鎖は補助であり、体重を預けるものではない。
実際に歩いてみると、難易度は極端に高くない。
しかし、長さがあるため集中力を維持する必要がある。
一部には大山三峰を思わせるような岩場もあり、西黒尾根を意識したトレーニングとしては十分な内容だった。

芽ノ木棚沢ノ頭、そして登り返し
芽ノ木棚沢ノ頭へ到着。

ここで休憩を取ったあと、すぐに引き返す。
そして始まるのが、先ほど下った鎖場の登り返しである。
「さっき通過したばかりなのに、またここを登るのか。」
そんなことを考えながら、一歩ずつ高度を上げていく。
下降より登りの方が安心感はあるものの、9.7kgのザックは確実に脚へ負荷を与えてくる。
無事に鎖場を抜けた時には、技術面での確認は一通り終えられたという安心感があった。
本当の核心部は鍋割峠への登り返しかもしれない
鎖場を越えても終わりではない。
鍋割峠から鍋割山への急登が待っている。
高度差は大きくない。

それでも荷物を背負った状態では、着実に体力を削られる。
今回のルートで最も苦しかったのは、この登り返しだった。
景色ではなく、自分の呼吸だけを見つめながら歩き続ける。
その先で、雲の隙間から富士山が姿を見せてくれた。

短い時間だったが、それだけで十分だった。
歩荷トレーニングの成果
今回の歩荷重量は約9.7kg。
下山では疲労を感じたものの、以前悩まされていた肩の痛みは出なかった。
ザックの背負い方や荷重分散は、少しずつ改善してきているようだ。
一方で、重量を背負った状態で長時間歩き続ける脚力には、まだ余裕を持たせたい。
西黒尾根では、技術だけでなく最後まで動き続ける持久力も求められる。
今回の山行は、その課題を確認する良い機会になった。
今回の山行を振り返って
派手な景色もなければ、大きな達成感を味わえる山でもない。
しかし、目的を持って歩けば、このルートは非常に価値がある。
長い鎖場を安全に通過すること。
荷物を背負って急登を登り返すこと。
疲労した状態でも冷静に行動すること。
どれもアルプスの一般登山道では求められる基本技術であり、一度の山行で身に付くものではない。
西黒尾根本番まであと少し。
今回のトレーニングで課題と手応えの両方を確認できたことは、大きな収穫だった。
次はいよいよ、本番の岩稜へ向かう。



