神奈川を代表する人気の山、塔ノ岳。
表丹沢の玄関口である大倉から山頂へ続く大倉尾根は、「バカ尾根」の愛称で知られる丹沢屈指のトレーニングルートだ。
今回の目的は三つ。
- 20回目の塔ノ岳登頂で何を感じるのか
- 暑熱順化
- 歩荷トレーニング
とは言え、今回のザック重量は5.1kg。
最近は9kgを背負って下界を歩いているので、「今日は軽めだからヨシ」と自分に言い聞かせながら、大倉バス停をスタートした。
コースタイム
| 区間 | 時刻 |
|---|---|
| 大倉バス停 出発 | 07:04 |
| 観音茶屋 | 07:25 |
| 見晴茶屋 | 07:57 |
| 駒止茶屋 | 08:19 |
| 堀山 | 08:26 |
| 花立山荘 | 09:29 |
| 金冷シ | 09:51 |
| 塔ノ岳 山頂 | 10:48 |
| 大倉バス停 下山 | 12:53 |
- 距離:13.3km
- 累積標高差:1269m
- 行動時間:5時間49分
- 天候:晴
- アクセス:電車・バス(丹沢・大山フリーパス利用)
初夏の熱気
この日の市街地の天気予報は30℃近い気温。
まだ5月中旬とは思えない暑さだった。
朝7時台にもかかわらず、すでに空気は重い。
樹林帯に入っても風はほとんどなく、汗が止まらない。

BMI18の軽量級ボディには、この暑さが思った以上に堪える。
自然とペースも落ちる。
ただ、今回は「速く登る」ことが目的ではない。
あくまで暑熱順化。
夏山シーズンへ向け、身体を暑さに慣らすことが今回のテーマだった。
そう考えると、このコンディションはむしろ歓迎すべき状況なのかもしれない。
何度歩いても飽きない道
観音茶屋を通過し、見晴茶屋へ。
一本松を越え、いつものように堀山の家へ到着する。

堀山の家はかなりの賑わいだった。
丹沢のハイシーズンが始まりつつある空気を感じる。


何度も歩いてきた道。
何度も見てきた景色。
それなのに、不思議と飽きることはない。
新鮮味があるわけではない。
むしろ逆で、身体に馴染みすぎている感覚に近い。
登山を始めた頃、この塔ノ岳はもっと特別な存在だった。
長い登り。
終わらない階段。
疲労。
暑さ。
そして、自分の限界。
当時は「塔ノ岳に登る」という行為そのものが挑戦だった気がする。
20回目の登頂
山頂に到着。
20回目の塔ノ岳登頂。


そこで感じたこと。
それは――「とくに何もない」という感覚だった。
もちろん悪い意味ではない。
感動がなくなったわけではないし、塔ノ岳を好きではなくなったわけでもない。
ただ、あまりにも自然になった。
非日常ではなく、日常の延長。
挑戦の対象ではなく、自分の生活の一部。
山頂から見る丹沢主脈。
蛭ヶ岳方面へ伸びる稜線。
いつものように賑わう山頂。

そのすべてが、「帰ってきた」という感覚に近かった。
たぶん、自分はこれからも塔ノ岳に登り続けるんだと思う。
何か特別な達成感を求めているわけではない。
ただ、定期的に戻ってきたくなる。
それが今の自分にとっての塔ノ岳なのだろう。
丹沢の賑わい
この日の山頂はかなりの賑わいだった。
快晴、新緑、そして初夏を思わせる気温。
条件が揃えば、やはり丹沢は強い。

花立山荘も混雑しており、ここまで人が多い光景を見るのは久しぶりだった気がする。

塔ノ岳には本当にいろいろな登山者がいる。
本格的な縦走装備の人。
軽快な装備で駆け上がるトレイルランナー。
グループ登山の人たち。
ゆっくり景色を楽しみながら歩く人。
山頂で写真撮影をお願いした際、わざわざポーズまでしてくれる歩荷さんもいた。

こういう空気感もまた、塔ノ岳らしさなのかもしれない。
少しずつ変わっていくもの
下山時にはさらに気温が上がっていた。
「すっかり夏ですね」
そんな言葉が自然に出る。
丹沢ベース前で、今まで気付かなかったものを見つけた。
20回登っても、まだ見えていないものがある。

登山とは、山が変わるのではなく、自分の視点が少しずつ変わっていく遊びなのかもしれない。
かつては怖かった塔ノ岳。
だが今は、安心して戻ってこられる場所になった。
それでも、この山が決して楽な山ではないことに変わりはない。
標高差1200m超を一気に登る大倉尾根は、体力も精神力も確実に削ってくる。
だからこそ、何度も通いたくなる。
今回の20回目の登頂で感じたのは、大きな感動ではなかった。
ただ、「これからも普通に登り続けるんだろうな」という、とても静かな確信だった。





