舞台は東京都奥多摩。選んだのは、奥多摩の名峰、
御岳山
大岳山
御前山
をつなぐロング縦走だ。
距離23.7km、累積標高差は登り2,011m。
数字だけ見れば、決して“観光ハイク”ではない。
沢井駅からの静かなスタート
本来は御嶽駅スタートが一般的だが、普通に間違えて沢井駅から出発。こういう小さなミスも、山行のスパイスになる。

多摩川を渡り、滝本駅方面へ。舗装路が続く。
正直に言えば、御岳山までは物足りなさを感じた。高尾山一号路のような観光地的雰囲気。足は温まるが、冒険心はまだ刺激されない。

ケーブルカー利用者を横目に、歩いて標高を上げる。
御岳山 ― 信仰と観光の山
御岳山は標高929m。山頂一帯は集落のようになっており、武蔵御嶽神社を中心に信仰の歴史が息づく。参拝客やハイカーが多く、奥多摩の玄関口とも言える存在だ。

アクセスが良く、整備も行き届いている。初心者や家族連れも多い。ここだけを見れば「奥多摩は優しい」と錯覚する。

だが、それは前半に過ぎない。
大岳山へ ― 岩と鎖の世界へ入る
御岳山から先、空気が変わる。
奥の院を越え、鍋割山分岐を過ぎると岩場が増えてくる。鎖場も現れる。難度は高くないが、気を抜けば転倒はあり得るレベル。

そして大嶽神社を越えて、大岳山(標高1,266m)へ。

花粉の影響で遠景はやや霞んでいたが、山頂は賑わっていた。20〜30代の登山者も多い印象。岩稜の山らしく、開放感と高度感がある。

大岳山は奥多摩三山の中で最もアルペン的な性格を持つ。
岩場歩きの練習にもなるし、鎖場に対する恐怖心の確認にも適している。ただし、過信は禁物だ。
鋸山から御前山へ ― 真の消耗戦
鋸山を越え、大ダワへ下る。この辺りから、脚へのダメージが蓄積してくる。
アップダウンが細かく続く。
標高はそれほど高くないが、精神的にも体力的にも削られる区間だ。

湯久保尾根分岐から御前山避難小屋へ。
ここで小休止。正直、ここまで来ると楽ではない。
御前山 ― 奥多摩の静かな盟主
御前山(標高1,405m)は奥多摩三山の中で最高峰。
派手さはないが、どっしりと構えた山容が印象的だ。

山頂からは奥多摩の山々、そしてうっすらと富士山。
この瞬間のために歩いてきたと言っていい。

ただし、ここで安心してはいけない。
奥多摩湖までの下り ― 最後の試練
惣岳山、サス沢山を経て奥多摩湖へ。
この下りが想像以上に激しい。

急傾斜、長い下り、滑れば危険な箇所もある。
疲労した脚での下降は、登り以上に集中力が必要だ。
「危険箇所なし」という記録は事実だが、それは“整備されている”という意味であって、“簡単”という意味ではない。
コースタイム
| 時刻 | 通過点 |
|---|---|
| 07:28 | 沢井駅 出発 |
| 09:37 | 御岳山 |
| 12:04 | 大岳山 |
| 13:10 | 鋸山 |
| 14:39 | 御前山 |
| 16:49 | 奥多摩湖バス停 ゴール |
行動時間:9時間21分
総評 ― 奥多摩を侮るな

普段丹沢を歩いていると、「奥多摩は楽だろう」と思いがちだ。
しかしこの縦走は違う。
前半は観光、
中盤は岩稜、
後半は持久戦。
距離と累積標高差がじわじわ効く。
体力・脚力・集中力が問われる一日だ。
だが同時に、東京都内でこれだけ変化に富んだ縦走ができる価値は大きい。
奥多摩三山は、優しくもあり、厳しくもある。
それを一日で体験できるこのルートは、確実に“力がつく山行”だった。
軽く見るには、少し長すぎる。
真剣に向き合うには、ちょうどいい。
そんな一日だった。




