「北アルプスは、自分にはまだ早い。」
そんな思いが、ずっと心のどこかにあった。
塔ノ岳へ初めて登った日も、周囲はベテランばかりに見え、自分だけが場違いな気がしていた。あの日と同じ感覚を、夜明け前の穂高駅で再び味わうことになる。

本当に自分は北アルプスを歩けるのだろうか。
期待よりも不安の方が大きかった。
しかし、この二日間は、その考えを大きく変えてくれた。
山行概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日程 | 2026年8月3日~4日 |
| コース | 中房温泉~燕岳~燕山荘~大天荘~大天井岳(往復) |
| 距離 | 20.8km |
| 累積標高 | 登り2,174m / 下り2,172m |
| 行動時間 | 13時間22分 |
コースタイム
1日目
| 区間 | 時刻 |
|---|---|
| 中房温泉 | 6:27 |
| 第1ベンチ | 6:52 |
| 第2ベンチ | 7:13 |
| 第3ベンチ | 7:42 |
| 富士見ベンチ | 8:10 |
| 合戦小屋 | 8:44 |
| 合戦山 | 9:11 |
| 燕山荘 | 9:42 |
| 燕岳 | 10:08〜10:20 |
| 北燕岳 | 10:31 |
| 燕山荘 | 11:15 |
| 蛙岩 | 12:02 |
| 大下りノ頭 | 12:31 |
| 為右衛門吊岩 | 13:40 |
| 喜作レリーフ | 13:42 |
| 大天荘 | 14:13 |
2日目
| 区間 | 時刻 |
|---|---|
| 大天荘 | 5:48 |
| 大天井岳 | 5:58〜6:03 |
| 大天荘 | 6:25 |
| 燕山荘 | 9:02 |
| 合戦小屋 | 9:40 |
| 中房温泉 | 11:23 |
合戦小屋のスイカは、なぜこんなにも美味しいのか
燕岳への登山道は、北アルプスの入門コースとはいえ標高差は約1,500m。
樹林帯をひたすら登り続ける。
第一ベンチ、第二ベンチ、第三ベンチ。

着実に高度を上げていくが、想像以上に体力を使う。
そんな中で辿り着いた合戦小屋。

名物のスイカを食べる。

「スーパーで売っているスイカと同じ。」
頭では分かっている。
それでも、汗だくで登ってきた身体には驚くほど美味しかった。
山で食べるからこその価値。
これも登山の醍醐味なのだと思う。
花崗岩が作る燕岳の景色は、まるで別世界
森林限界を越えた瞬間、景色が一変する。
白い花崗岩。
緑のハイマツ。
そして青空。

これまで丹沢で見てきた景色とは、まったく違う世界だった。
イルカ岩。

メガネ岩。

独特な岩が次々と現れ、歩くだけで楽しい。
そして山頂へ。

燕岳は「北アルプスの女王」と呼ばれる理由が、一目で分かった。
優雅で、美しく、それでいて力強い。
さらに北燕岳まで足を延ばす。

途中では人生で初めて野生の雷鳥にも出会えた。

北アルプスへ来たことを実感した瞬間だった。
憧れだった稜線歩き
燕山荘から大天井岳へ向かう稜線。
これまで写真や動画で何度も見てきた景色。

その場所を、自分の足で歩いている。
「こんな道を歩ける日が来るとは。」
ただ、それだけを考えながら歩いていた。
危険箇所は多くないものの、アップダウンは想像以上。
唯一の鎖場や喜作レリーフ付近では少し緊張する場面もあった。

それでも視界いっぱいに広がる稜線は、疲労を忘れさせてくれるほど美しかった。
大天荘で味わう山小屋の時間
午後になるとガスが広がり始めた。
当初はそのまま大天井岳へ登頂する予定だったが、安全を優先して翌朝へ変更。
結果として、この判断は正解だった。

屋根裏部屋で休み、テント場を見学し、豪華な夕食を楽しむ。

「来年はテント泊で歩きたい。」

そんな気持ちが自然と湧いてきた。
山小屋から先へ続く稜線を眺めながら、いつか槍ヶ岳まで歩く自分を想像していた。
モルゲンロートの槍ヶ岳
翌朝4時。
外へ出ると、冷たい空気が頬を刺す。
やがて東の空が赤く染まり始める。
そして槍ヶ岳がモルゲンロートに染まった。

写真では何度も見てきた景色。
しかし、実際に目の前で見る光景は別格だった。
時間が止まったような静けさ。
ただ立ち尽くして眺めることしかできなかった。
青空の大天井岳へ
昨日とは打って変わり、朝は快晴。
青空の下、大天井岳へ登頂する。

山頂から望む北アルプスの山々。
槍ヶ岳。

穂高連峰。
どこまでも続く稜線。
ここまで歩いてきた達成感と、これから先への憧れ。
様々な感情が入り混じっていた。
北アルプスはゴールではなく、新しいスタートだった
今回の山行で、一つの区切りがついた気がする。
丹沢で積み重ねてきた経験は、北アルプスでも確かに活きていた。
もちろん課題も多い。
もっと体力を付けたい。
もっと歩けるようになりたい。
もっと経験を積みたい。
そして来年は、テントを背負って表銀座を歩く。
燕岳から大天井岳。
そして西岳を越え、槍ヶ岳まで。
今回歩いた稜線の続きを、自分の足でつなげたい。
北アルプスへの挑戦は終わったのではない。
ようやく、本当のスタートラインに立っただけなのだから。






