本当は、もっと長い距離を歩くつもりだった。
TJTのような長距離山行。
だが今回は、8.25kgのザックを背負っている。
まだ、この重量で長距離へ突っ込むには不安があった。
特に以前、一時的に8kgを超えた際には肩に痛みが出ていたこともあり、まずは“試験山行”が必要だと判断した。
そこで選んだのが、未踏だった 南高尾セブンサミッツ だった。
高尾山周辺と聞くと、観光地のイメージが強い。
しかし、南高尾側は空気が違う。
派手な絶景や強烈な難所があるわけではない。
だが、静かな樹林帯の登山道が長く続き、細かなアップダウンが地味に脚を削っていく。
歩荷トレーニングや長距離歩行の練習には、むしろちょうど良い山域なのかもしれない。
南高尾セブンサミッツとは
南高尾セブンサミッツは、高尾山の南側に位置する低山群を縦走する人気ルートである。
一般的には、
- 草戸山
- 榎窪山
- 泰光寺山
- 入沢山
- 中沢山
- コンピラ山
- 大洞山
の七座を指す。
標高そのものは低く、危険箇所も少ない。
しかし、アップダウンが多く、歩行距離も長めであるため、意外と消耗する。
そのため、
- ロング縦走の練習
- 歩荷トレーニング
- 心肺機能強化
- 装備テスト
などには非常に向いている。
実際、今回のような“身体と装備の確認”を目的とした山行とはかなり相性が良かった。
コースタイム
| 時刻 | ポイント |
|---|---|
| 07:09 | 高尾山口駅 |
| 08:33 | 草戸山 |
| 08:53 | 榎窪山 |
| 09:19 | 泰光寺山 |
| 09:52 | 入沢山 |
| 10:15 | 中沢山 |
| 10:38 | コンピラ山 |
| 10:48 | 大洞山 |
| 11:21 | 大垂水峠 |
| 12:07 | もみじ台 |
| 12:23 | 高尾山 |
| 13:07 | 稲荷山 |
| 13:12 | 高尾山口駅 |
行動時間:6時間03分
距離:15.7km
累積標高差:910m
装備重量:8.25kg
高尾山のすぐ隣とは思えない静けさ
朝の高尾山口駅は、すでに賑わっていた。

しかし、南高尾側へ入ると空気が一変する。
静かだ。

高尾山周辺の賑わいが嘘のように、人の気配が薄くなる。
歩き始めてすぐ、「ここを歩くのは初めてだ」という感覚が強くなった。
登山道自体は歩きやすい。
危険な岩場が連続するわけでもなければ、高度感に怯えるような場所もない。
だが、アップダウンは思った以上に多い。
特に8kgを超える荷を背負っていると、小さな登り返しでも確実に脚へ蓄積していく。
それでも、不思議と歩き続けやすい。
南高尾は、“攻略する山”というより、“長く歩くための山”なのだと思う。
8kgオーバー、その変化
今回、最も確認したかったのは身体の反応だった。
以前、8kgを超えたザックを背負った際には肩に痛みが発生していた。
しかし今回は違った。
肩の痛みが、まったく出なかったのである。
これはかなり大きい。
おそらく以前より、荷重分散が上手くできるようになっている。
肩だけで支えるのではなく、腰へ適切に逃がせるようになってきたのだと思う。
歩荷では単純な筋力だけではなく、「どう背負うか」が重要になる。
特に長時間行動では、その差が後半に現れる。
登り始めこそ、大腿四頭筋に少し嫌な刺激が来ていた。
「今日は脚が重いかもしれない」と感じる感覚だった。
だが、中盤へ入る頃には完全に消えていた。
身体が荷重へ順応したのだろう。
こういう変化は、一度の山行では分からない。
少しずつ積み重ねていく中でしか見えてこない。
穏やかな登山道、それでも確実に削られる
南高尾セブンサミッツには、派手な要素は少ない。
鎖場もない。
高度感のある痩せ尾根もない。

しかし、それでも15kmを超える距離を歩き続ければ、疲労は確実に積み上がっていく。
途中ではスズメバチにも遭遇した。
低山では珍しくないが、静かな樹林帯で突然現れるとやはり緊張する。
また、今回は補給テストも兼ねていた。
途中で投入した「メダリスト顆粒」はかなり感触が良かった。
こういう補給系は、本番でいきなり使うのではなく、試験山行で実際に試しておきたい。

その意味でも、南高尾はちょうど良かった。
過酷すぎず、しかし楽すぎない。
身体や装備の反応を見るには、非常に優秀なフィールドだったと思う。
高尾山、そして“次”へ
南高尾を抜け、大垂水峠から高尾山方面へ向かう。
ここまで来ると、空気が一気に変わる。
静かな登山道から、観光地の世界へ戻される感覚。

そして高尾山山頂。

記念撮影待ちの行列。

ある意味、この日最大の核心部だった。
だが、快晴の山頂はやはり気持ちが良い。
青空の下、多くの人が山頂を楽しんでいる。
その横を通り抜け、自分は再び下山路へ入る。
稲荷山へ向かう頃には、脚にはしっかり疲労が入っていた。
それでも、まだ歩ける。
以前なら、後半は荷重に身体が負けていたと思う。
肩が痛み、フォームが崩れ、ただ耐えるだけになっていたはずだ。
だが今回は違った。
身体は重い。
疲れている。
それでも前へ進める。
高尾山口駅へ戻る最後の道。
いわゆる“ヴィクトリーロード”を歩きながら、頭に浮かんでいたのは、「次はもっと先へ行けるかもしれない」という感覚だった。
歩荷。
長距離。
長時間行動。
そういうものは、一気には強くならない。
だが、こういう山行を積み重ねた先にしか見えない景色もある。
南高尾セブンサミッツ。
それは“挑戦の山”というより、“次の山へ進むための山”だったのかもしれない。





