登山者を必ず悩ませる「膝」という問題
登山を始めたばかりの頃、あるいは山に入る頻度が低い時期、ほぼ例外なく多くの人が直面する問題がある。
それが膝の痛みだ。
私自身、登山を始めてから最初の半年ほどは、毎回のように膝の違和感、そして痛みに悩まされた。特に下山時は顕著だった。標高を下げるごとに膝が主張を始め、やがて「下山が怖い」という感情すら芽生えるようになる。
酷い時には、下山前にロキソニンを服用し、「効いてくれ」と祈るような気持ちで歩いたこともある。
登山を続けたい。しかし膝がもたない。
この矛盾は、初心者だけでなく、ブランクのある登山者にも容赦なく襲いかかる。
あくまで個人的な体験であるという前提
今回は、そんな膝の痛みに対して、私が実際に取った対策について書いてみたいと思う。
ただし、最初に断っておく。
これはあくまで私個人の体験談であり、医学的なエビデンスは一切ない。
万人に通用する方法でもない。
参考にする場合は、必ず自己責任で判断してほしいし、痛みが強い場合や不安があるなら、迷わず医療機関を受診してほしい。
そのうえで、読み進めてもらえればと思う。
私が選んだ、極めて単純な対策
私が取った対策は、驚くほど単純だった。
それは「痛みがあっても登り続けること」。
逃げない。休まない。やめない。
私の場合、膝の状態がどうであれ、週に一度の登山を継続した。
もちろん、不安はあった。
「悪化するのではないか」
「取り返しのつかない故障になるのではないか」
そんな考えが頭をよぎらなかったと言えば嘘になる。
それでも山に向かった。
支えになった一つの仮説
なぜ、登り続けたのか。
理由は一つの仮説にあった。
膝の痛みの多くは、筋力不足、特に下半身の支持力不足によって引き起こされる。
ならば解決策は明確だ。
筋力をつけるしかない。
そして登山者にとって、最も効率的で、最も実践的なトレーニングは何か。
それは、山を登ることそのものだ。
ジムでのスクワットでも、階段昇降でもない。
不整地で、荷重を受けながら、長時間歩き続ける。
登山ほど膝周りの筋群を総合的に使う運動は、そう多くない。
私はこの仮説を信じた。
痛みを「警告」ではなく「適応」と捉える
もちろん、無理はしない。
明らかに異常な痛み、鋭い痛み、腫れを伴う場合は引き返す。
だが、「違和感」や「鈍い痛み」程度であれば、そのまま行動を続けた。
痛みを「危険信号」ではなく、「適応途中の反応」として捉えるようにした。
これは精神論ではない。
身体は、負荷をかけなければ適応しないという、ごく当たり前の話だ。
半年後、身体は確実に変わった
結果はどうだったか。
おおよそ半年が過ぎた頃、ふと気づいた。
「あれ、今日は膝が気にならないな」と。
それは一度きりではなかった。
次の山行でも、その次でも同じだった。
気づけば、下山時に膝を気にすることはなくなっていた。
今では、累積標高差の大きい山行や、ハードなルートを歩いても、違和感すら感じない。
ロキソニンに頼ることもなくなった。
これは「治った」というより、「身体が登山に適応した」という感覚に近い。
登山は身体を選別する行為である
登山は、身体を鍛える行為であると同時に、身体を選別する行為でもある。
続ける者の身体は山に最適化され、続けられない者は自然と離れていく。
残酷だが、これが現実だ。
最後に
繰り返しになるが、これは私個人の体験に過ぎない。
すべての膝の痛みが、登り続けることで改善するとは限らない。
半月板損傷や靭帯の問題など、明確な外傷や疾患が隠れている可能性もある。
だからこそ、痛みを無視しろとは言わない。
ただ一つ言えるのは、「続けなければ、登山向けの身体は手に入らない」ということだ。
登山は、優しくない。
だが、正直でもある。
継続した者には、確実に応えてくれる。
もし今、膝の痛みで悩んでいるなら。
そして、それでも山を続けたいと思っているなら。
自分の身体と向き合いながら、一歩ずつ積み重ねてほしい。


