金曜日の夕方。
仕事を終えPCの電源を落とし、数十分後には土の上を歩いている。
向かったのは神奈川・大磯の 湘南平。
最寄りは 大磯駅。
距離4.3km、累積標高差は約200m。
行動時間はわずか1時間10分。
数字だけ見れば、トレーニング未満の軽い山行だ。
だが、この“短さ”こそが価値になる。
都市と山のあいだ

16:42、大磯駅を出発。
改札を抜けた時点では、まだ完全に仕事の延長線上にいる。

夕焼けが空を染めている。
街は日常のリズムのまま動いている。

高田公園までは、ほぼ散歩道。
特別な装備もいらない。
スニーカーでも十分歩ける。
だが、羽白山から紅葉山へ向かうあたりで、勾配が現れる。
わずかな急登。
心拍が上がり、呼吸が深くなる。

ここでスイッチが切り替わる。
・今日のタスク
・未処理の案件
・来週の予定
それらが、少しずつ距離を取る。
山は問題を解決してくれるわけではない。
だが、問題との距離を適切にしてくれる。
コースタイム
| 時刻 | 行程 |
|---|---|
| 16:42 | 大磯駅 出発 |
| 16:56 | 羽白山 |
| 17:02 | 紅葉山 |
| 17:09 | 高田公園分岐 |
| 17:17 | 湘南平 |
| 17:37 | 善兵衛池 |
| 17:52 | 大磯駅 到着 |
行動時間:1時間10分
極めてシンプルな周回。
危険箇所はなし。
迷うポイントも少ない。
だが、このコンパクトさが“平日の余白”にちょうどいい。
たった180mがくれる視界
17:17、山頂到着。

すでに日が沈みかけている。
空は群青へと変わりつつある。

展望台からは360度のパノラマ。
海、市街地、そして遠くに浮かぶ 富士山。
標高は約180m。
だが視界は遮るものがない。

高さではない。
重要なのは“抜け”だ。
都市にいると、常に何かに囲まれている。
建物、情報、時間制限。
湘南平は、それらを一度リセットする。
視界が広がると、思考も広がる。
視線が遠くへ向くと、自分の悩みは相対的に小さくなる。
速さよりも整うこと
今回の歩くペースは0.6〜0.7。
標準コースタイムよりかなり速い。
だが、速さを競う場所ではない。
重要なのは、
余裕を持って終えられること。
1時間という制限の中で、
確実に汗をかき、
確実に視界を広げ、
確実に気持ちを整える。
これは長時間の縦走とは別の価値だ。
恒例という安心感
昨年も同じ時期に訪れている。
同じ場所。
同じ季節。
ほぼ同じ時間帯。
人は変化を求める。
だが、変わらない地点を持つことも強さだ。
「ここに来れば整う」
そう言える場所があるだけで、
日常は少しだけ安定する。
湘南平は、自分にとってその一つになりつつある。
規模ではなく、接続性
アルプスのような壮大さはない。
岩稜帯もない。
スリルもない。
それでも、確実に山だ。
そして何より、
仕事帰りに接続できる。
この“接続性”が価値になる。
登山というと、
時間・装備・体力・計画が必要な特別な行為に思える。
だが湘南平は違う。
日常と地続きだ。
駅を出て、
坂を登り、
気づけば360度の景色。
非日常は、意外と近くにある。
山は規模で測れない
距離4.3km。
累積標高差200m。
行動時間1時間10分。
数字だけを並べれば、小さな山行だ。
だが、その1時間で思考は確実に整理される。
呼吸は深くなり、
視界は広がり、
足取りは軽くなる。
標高180m。
それでも十分に高い。
山は規模で測るものではない。
どれだけ自分を整えられるかだ。
また来年も、きっと同じように仕事帰りに立ち寄るだろう。
大きな挑戦ではない。
だが確実な一歩。
都市と山のあいだを、
静かに往復する時間。
それが、湘南平周回の本質だ。






