私は普段の冬山以外の山行では、トレッキングポールを使わない。
理由は単純だ。ポールに頼ると楽にはなるが、その分、下半身と体幹が本来の力を発揮できない。丹沢のアップダウンをポールなしで歩き切ることが、体のトレーニングであり、登山技術向上の最短ルートだと思っている。
トレッキングポールの役割とは
そもそもトレッキングポールは、歩行を安定させるための「登山用の杖(ポール)」だ。軽量で丈夫なアルミやカーボン製が一般的で、長さ調整も可能。主に以下の役割がある。
- 足腰の負担軽減
登りでは腕の力で体重を分散でき、下りでは膝への負担を大きく減らす。特に長時間歩く登山ではありがたい補助装備だ。 - 転倒リスクの軽減
不安定な岩場や滑りやすい斜面でのバランスを支える。疲れた足でも一歩を安定させやすくなる。 - 長時間の歩行を楽にする
体重を分散させるため、足腰の疲労をある程度抑えられる。ポールを持つと、歩きのリズムも安定する傾向がある。
確かに便利だ。しかし私は使わない。便利さよりも、自分の脚と体幹で歩く登山を重視している。
それでもポールを使わない理由
1. 下半身の筋力をフルに使える
ポールがあると腕や肩で体重を一部支えられる。しかし使わない場合は、太もも・お尻・ふくらはぎ・体幹がすべて主体になる。特に下りは膝だけでなく股関節や足首も使うため、全身運動になる。
丹沢の大倉尾根から塔ノ岳への下りなど、長時間の下りではその差がはっきり出る。ポールなしで歩き切った後の、疲労感と充実感は格別だ。
2. バランス能力が自然に鍛えられる
ポールがあると三点歩行に近くなり、安定感は増す。しかし、使わないと足首や体幹の微調整が必要になり、自然とバランス能力が向上する。
滑りやすい泥道や落ち葉の斜面でも、ポールなしで自分の体重を調整しながら歩くことで、自然な安定感が身につく。これこそ、登山の「歩きの技術」を磨く醍醐味だ。
3. 登山技術そのものが向上する
ポールに頼らないことで、歩きの精度が上がる。具体的には以下の点が鍛えられる。
- 足の置き方
- 重心の取り方
- 歩幅やリズム
- 斜面での安定姿勢
特に岩場や鎖場があるコースでは、手を自由に使えることが大きなアドバンテージになる。丹沢の急登や段差の多い尾根道で、ポールを持っていない方がむしろ動きやすいことが多い。
4. 体の「癖」が改善できる
ポールに頼ると、下半身の弱点が隠れてしまうことがある。使わないと、次のような体の偏りが自覚できる。
- 片足の弱さ
- 着地の癖
- 歩幅の偏り
自分の歩きの弱点に気づくことができるため、改善につながる。ポールなし登山は、体のバランスを見直す絶好の機会でもある。
ポールなし登山のメリットまとめ
- 足腰の筋トレになる
- バランス・体幹が鍛えられる
- 純粋な歩行技術が伸びる
特に丹沢のようなアップダウンが多く変化に富んだ山では、ポールなしで歩ける技術があると、登山の幅は格段に広がる。荷物が軽くなり、手が自由になることで、岩場や段差での動作もスムーズになる。
実際の山行で意識していること
ポールなしで登る場合、下りは特に注意が必要だ。
- 歩幅を小さく:膝への負担を減らす
- 足裏全体で着地:踵やつま先だけに体重をかけない
- 重心をやや前に:後ろに倒れないようにする
登りではリズムを一定に保ち、つま先だけでなくふくらはぎ全体を使う。
これを意識するだけで、ポールなしでも安全に歩くことができる。
結論
トレッキングポールは便利だ。しかし、私はあえて使わない。理由は明確だ。
- 体のトレーニングになる
- 歩行技術が向上する
- 丹沢のような変化に富んだ山で手が自由になる
ポールに頼らない登山は、負荷が高くなる分、歩き切った後の達成感も大きい。登山の本質は「自分の体で山を攻略すること」。ポールなし登山は、それを体現する最もシンプルで効果的な方法だ。






