今回の目的は、塔ノ岳そのものではない。
12.25kgの荷物を背負って歩く、歩荷トレーニング。
ヤビツ峠から表尾根を経由して塔ノ岳へ登り、そのままヤビツ峠へ戻るピストンを計画した。
距離は約14km。
累積標高差は1,000mを超える。
普段の丹沢なら、特別に厳しい数字ではない。
ただし今回は、12.25kgの荷物を背負っている。
この重量が、思っていた以上に効いた。
山行概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日程 | 2026年8月16日(日) |
| ルート | ヤビツ峠~二ノ塔~三ノ塔~塔ノ岳~大倉 |
| 距離 | 14.3km |
| 累積標高差 | 登り1,079m/下り1,546m |
| 行動時間 | 7時間18分 |
| 歩行時間 | 6時間03分 |
| 休憩 | 1時間15分 |
| ペース | 0.7~0.8 |
| 天候 | 曇りのち雨 |
| 目的 | 12.25kg歩荷トレーニング |
コースタイム
| 時刻 | 地点 |
| 08:07 | ヤビツ峠 |
| 08:28 | 表尾根登山口 |
| 09:23 | 二ノ塔 |
| 09:38 | 三ノ塔 |
| 10:50 | 烏尾山荘 |
| 11:05 | 行者ヶ岳 |
| 11:40 | 新大日 |
| 12:06 | 木ノ又小屋 |
| 12:31 | 塔ノ岳 |
| 13:06 | 塔ノ岳出発 |
| 13:37 | 花立山荘 |
| 14:06 | 堀山の家 |
| 14:49 | 見晴茶屋 |
| 15:25 | 大倉 |
ヤビツ峠から表尾根へ
8時過ぎ、ヤビツ峠をスタート。

気温は低めで、若干肌寒い。
夏の丹沢としては、むしろ歩きやすいコンディションだった。
しかし、二ノ塔までの樹林帯に入ると、早くも重量を感じる。

この区間の急登は、もともと苦手だ。
そこへ12.25kg。
思ったようにペースが上がらない。
「今日は重いな」
そんな感覚を抱えたまま登っていく。
9時23分、二ノ塔。

山頂付近はガスに覆われ、視界はほとんどない。
それでも稜線に出ると、一瞬だけ秦野市街が見えた。

そして9時38分、三ノ塔。
最近、よく来ている場所だ。

ここから塔ノ岳へ向けて表尾根を進む。
ペースが上がらない
三ノ塔を越え、烏尾山、行者ヶ岳へ。

このあたりは岩場や鎖場もあり、表尾根らしいアップダウンが続く。
11時05分、行者の鎖場付近。
同一ピッチ内に人が入ってきたことで、少し焦った。

普段なら気にならないことでも、重量を背負っていると余裕がなくなる。
ペースを上げたい。
しかし、身体がついてこない。
崩落地からの眺望を眺めながら先へ進む。
そして11時40分。
新大日に到着した。

ここで、一度立ち止まって考える。
「このままでは、ヤビツ峠に戻れない」
今回の計画は、塔ノ岳を往復してヤビツ峠へ戻ること。
問題は、時間だった。
12.25kgの重量に完全に負けている。
このまま塔ノ岳へ向かえば、登頂そのものはできるかもしれない。
しかし、その後ヤビツ峠まで戻るとなると、最終バスに間に合わない可能性が高い。
ここで判断した。
ヤビツ峠への復帰を諦める。
今回の計画は、ここで終了。
撤退することにした。
……ただし。
「塔ノ岳へ行かない」という意味ではない。
下山ルートを変更する。
塔ノ岳から大倉尾根を下れば、大倉へ抜けられる。
つまり、目的地をヤビツ峠から大倉へ変更する。
これが今回、自分にとって初めての「ちゃんとした撤退」だった。
撤退したのに塔ノ岳へ
新大日からさらに進む。
木ノ又小屋はスルー。
相変わらずガスは濃い。

12時31分。
塔ノ岳に到着。
山頂もガスの中だった。

それでも、ここまで来た。
12.25kgを背負って、約4時間半。
身体的にはかなり堪えた。
そして13時10分。
予定外の大倉尾根へ。
雨の大倉尾根
塔ノ岳から大倉へ下る。
ほどなくして雨が降り始めた。
花立山荘に着く頃には、完全に雨模様。

雨の大倉尾根を歩くのは二度目。
今回は、いつも以上に慎重に下る。
濡れた登山道では、登り以上に下りのほうが怖い。

特に今回は重量がある。
足元を確認しながら、一歩ずつ下っていく。
堀山の家は大盛況。

その後もひたすら下る。
途中、二俣へ続く破線ルートを確認。

道そのものは、それほど難しくなさそうだ。
これは次回、挑戦してみたい。
そして15時24分。
大倉に到着。

生還。
12.25kgに完全敗北
今回の山行を振り返ると、コンディション自体は悪くなかった。
気温も低め。
雨は後半からだった。
ルートも何度も歩いている丹沢。
それでも、ペースが上がらなかった。
原因は明確だ。
12.25kgの重量。
完全に負けた。
まだ、この重量を長時間背負って歩き続けるだけの筋力が足りない。
歩荷トレーニングとしては、非常に分かりやすい結果になった。
「このくらいなら大丈夫だろう」と思っていた重量が、実際には身体にかなりの負荷を与えていた。
これは収穫だった。
撤退できたこと
今回、一番大きかったのはここかもしれない。
以前にも「登山道が分からない」という理由で撤退したことはある。
しかし、それは今回とは少し違う。
今回は、時間と体力を考えて、自分自身で計画変更を判断した。
「このままではヤビツ峠へ戻れない」
そう判断した時点で、当初の計画を捨てた。
そして大倉へ下山するルートへ切り替えた。
以前から、自分には一つ不安があった。
「撤退しなければならない状況になったとき、自分は本当に撤退できるのだろうか?」
山では、この判断ができないことが事故につながる。
性格的に、無理をしてしまう可能性もある。
だからこそ、今回の経験は大きい。
僕でも、撤退するときは撤退できる。
それが分かった。
山頂よりも大事なもの
今回は、結果的に塔ノ岳まで到達した。
だから「塔ノ岳に登頂できなかった」という意味での撤退ではない。
むしろ、ヤビツ峠へ戻るという当初の計画を捨てたことが、今回の撤退だった。
山では、計画通りに歩くことが正解とは限らない。
体力、時間、天候、装備。
その時点で得られる情報をもとに、目的地やルートを変更する。
今回、それを実際に経験できた。
そして12.25kgの歩荷では、まだまだ力不足。
こちらについては、撤退する必要はない。
次は、もう少し強くなってから挑戦したい。
今回は山に負けた。
でも、撤退の判断では負けなかった。
それだけでも、今回の山行には十分な意味があったと思う。






