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鍋割山・塔ノ岳・三ノ塔 縦走 ー 霧を裂き、三峰を越える

Posted on 2025年11月28日2025年11月28日 by XUONIX

朝の大倉バス停は、湿った曇天の空気に包まれていた。登山口に立った瞬間、今日の丹沢は完全にガスに覆われていることが分かった。

だが、それでも迷いはなかった。鍋割山、塔ノ岳、三ノ塔――三つのピークを踏み、白霧の稜線を縦走する。今日の目的は、景色ではない。いまの自分の体力と集中力がどこまで通用するのか、それを確かめることだった。


INDEX
1 白い森を抜け、鍋割山へ
2 塔ノ岳へ、白の稜線をつなぐ
3 表尾根、核心の行者の鎖場
4 三ノ塔、白霧の頂
5 コースタイム
5.1 まとめ — 白霧に刻んだ三峰の記憶

白い森を抜け、鍋割山へ

黒竜の滝を過ぎ、二俣へと続く森は、湿った空気に静かに包まれていた。木々の間から差し込む光はほとんどなく、沢の音だけが響く。渡渉点に足を浸すと、冷たさが一瞬で意識を覚醒させる。登山靴の中にじんわりと水が染み込み、歩きながらも体の感覚が研ぎ澄まされていくのが分かる。

標高1,000m付近に差し掛かると、世界は一気に白に包まれた。視界はほとんど消え、鍋割山への尾根道はまるで別世界のように感じられる。足元だけが頼りの、静かな稜線歩き。鍋割山荘に到着するころ、展望はないが不思議な安心感があった。白の世界は雑念を消し、歩くリズムだけを際立たせる。

山頂に立ち、ガスに包まれた稜線を眺める。遠くの山々は見えない。それでも心は満たされていた。景色は目に映らないが、足裏で地面を感じ、呼吸で空気を味わい、腕で重さを支える。山歩きの本質を、あらためて体感できる瞬間だった。


塔ノ岳へ、白の稜線をつなぐ

小丸、大丸、金冷シとアップダウンをこなしながら、塔ノ岳へ向かう。普段は展望が楽しい区間も、今日は白い世界が広がるだけだ。しかし、それが逆に歩く意味を鮮明にしてくれる。道の一歩一歩が、自分の存在を確かに刻んでいくようだった。

塔ノ岳山頂も真っ白で、富士山も相模湾も、遠くの稜線も姿を見せなかった。それでも歩いてきた距離と時間が確かに存在を証明している。ここでは、景色がなくても自分の軌跡が際立つのだ。


表尾根、核心の行者の鎖場

木ノ又大日、新大日、書策新道分岐、政次郎ノ頭。アップダウンを繰り返す尾根歩きは、ガスの中で一層緊張感が増す。霧に包まれ、視界は限られるが、耳には風と足音だけが残る。行者の鎖場に差し掛かる。ここは下りで通過したことはあるが、登るのは初めてだ。鎖を握り、濡れた岩に足をかける。視界がほとんどない中、足裏と手の感覚だけを頼りに慎重に一歩ずつ登っていく。終わったとき、緊張が解け、達成感がじわりと広がった。

行者ヶ岳、烏尾山を通過し、三ノ塔へ。崩落地帯の細い尾根も、足元だけを信じて進む。周囲は真っ白、目に映るものはない。だが、それがかえって歩く集中力を高めてくれる。


三ノ塔、白霧の頂

14時を過ぎ、三ノ塔に到着。山頂の展望はゼロ。けれど満足感は大きい。今日歩いた20km、累積標高差1,700m超の縦走は、ただの移動ではなく、白霧の中で自分を試す時間だった。景色に頼らず、自分の足、呼吸、体の感覚だけを信じて歩く。それこそが今日の価値だった。

下山の大倉尾根も静かに歩き、15時20分に大倉バス停へ。歩行距離20.8km、全行程8時間超。限界を試すつもりで臨んだ縦走は、まだ少し先へ進めることを教えてくれた。


コースタイム

時刻行程
07:06大倉バス停 出発
07:48–07:53黒竜の滝
08:03尾関広氏銅像
08:23–08:24二俣
08:28本沢渡渉点
08:48–08:50ミズヒ沢渡渉点
09:08–09:09後沢乗越
09:38–09:45鍋割山
10:01鍋割山荘
10:23小丸尾根分岐
10:33大丸
10:53金冷シ
11:14塔ノ岳
11:27木ノ又大日
11:37新大日茶屋跡
11:46書策新道分岐
11:57–12:12政次郎ノ頭
12:18–12:21行者の鎖場
12:36行者ヶ岳
13:00烏尾山
13:12三ノ塔地蔵菩薩
14:22三ノ塔
14:5143号鉄塔
15:20大倉バス停(下山)
© OpenStreetMap contributors

まとめ — 白霧に刻んだ三峰の記憶

今日の縦走で得たものは、景色ではなく、感覚と記憶だった。
視界はほぼゼロでも、歩く足音、呼吸、体の重さ、足裏の感触だけが確かにあった。
三つのピークを越え、白霧の中を歩いたことで、自分の限界を試しつつも、新しい余白を得たような感覚になった。

景色がなくても、山は教えてくれる。
歩くことで、自分を知り、未来の一歩に力を与えてくれるのだ。
今日の縦走は、そんな一日だった。

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